パンデミックの概要

更新: 2022年11月

パンデミックとは

パンデミックとは、病気の世界的な流行です。 各世紀にはヒトインフルエンザのパンデミックが数回発生しており、何百万人もの人が被害を受けています。 前回のインフルエンザのパンデミックは2009~2010年に発生し、専門家はパンデミックの再発生は避けられないと述べています。

COVID-19は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされる病気で、2020年3月に「パンデミック」が宣言されました。

パンデミック発生の経過

パンデミックは、次のような特性をもつ「新たな」ウイルスの出現によって発生します。
  1. ヒトが免疫をもっていない、またはあまり免疫がない
  2. ウイルスが深刻な疾病や死を引き起こす可能性がある
  3. ウイルスがヒトからヒトに簡単に感染する
これらの 3つの条件が満たされる場合、ウイルスは全世界に広がる可能性があります。 パンデミックの深刻さはウイルスの特性によって異なります。 一部のウイルスはほかのウイルスと比べて感染した場合に重症化したり、強い感染力をもっていたりします。

過去のパンデミック

1918年のインフルエンザパンデミック(H1N1ウイルス): 20世紀で最も厳しいパンデミックと考えられている「1918年のインフルエンザ(『スペインかぜ』)パンデミック」は、第一次世界大戦直後に発生し、約15か月間続きました。 このパンデミックが発生したのは飛行機による旅行が一般的になる前でしたが、流行は2カ月以内に世界中に広まり、 世界的な大惨事となりました。 世界中の人口の約30パーセントが感染し、約5000万人もの人々が死亡しました。死亡例の多くは、発症から48時間以内に死に至っています。 このパンデミックはインフルエンザAのH1N1株によって引き起こされました。このウイルスの元の感染源は、北フランスまたは米国ではないかと考えられています。 現在みられる季節性インフルエンザの1つの株は、このウイルスが変異したものです。

このパンデミックでは、感染の波が数回にわたって発生しました。 第一波はヨーロッパ、アジア、アフリカ、米国で発生し、 WHOはこの第一波を「特に致命的なものではない」と説明していましたが、第二波では感染者が大幅に増加し、死亡者も多数発生しました。

死亡率が高かったのは、5歳未満、20歳から40歳、65歳以上の人でした。 このパンデミックならではの特徴は、健康な人、特に20歳から40歳の年齢層の死亡率が高いことです。 このパンデミックでは、抗生物質や予防接種は利用できませんでした。 隔離によって感染の世界的な広がりを阻止することはできませんでした。ただし、オーストラリアは地理的に孤立しているためにウイルスがすぐには伝播しなかったと考えられ、

1957年のインフルエンザパンデミック(H2N2ウイルス): アジアかぜを引き起こした同ウイルスは、東アジアで最初に確認されました。 このインフルエンザは、もはやヒトの間では循環していないインフルエンザA型ウイルスの「A/H2N2」株によって引き起こされました。 65歳未満の人々の免疫率が低かったため、科学者がパンデミックの発生を予測することができ、1957年8月にはワクチンが提供されました。 このパンデミックでは流行の波が何回かあり、ほとんどの死亡例は1957年9月から1958年3月の間に発生しました。死亡率が最も高かったのは高齢者でした。

1968年のインフルエンザパンデミック(H3N2ウイルス): 1968年初頭、香港でインフルエンザパンデミックを引き起こすウイルス(インフルエンザA型ウイルスの「A/H3N2」株)が初めて確認されました。このパンデミックは1968年9月から1969年3月まで続きました。同ウイルスによる死亡者数は1968年12月と1969年1月にピークに達しました。死亡率が最も高かったのは65歳以上の人でした。 このウイルスの型は季節性インフルエンザとして今も流行しており、高齢者が感染すると重症化する恐れがあります。

2009年のインフルエンザパンデミック(H1N1ウイルス): 正式には「豚インフルエンザ」として知られており、2009年4月から2010年8月にかけて発生した21世紀初のパンデミックでした。『2009年H1N1パンデミックインフルエンザ』の原因となったウイルスは、それまでヒトヒト間の感染は非常に限られていました。これは、ヒト、豚、および鳥のインフルエンザA型ウイルスの混合型です。 子ども、若年成人、妊婦が最も影響を受けました。一方、高齢者は1957年以前のH1N1株への暴露からある程度の免疫を持っているようでした。世界人口に対する同ウイルスの影響は、以前のパンデミックほど深刻ではありませんでした。 世界中で15万1,000~57万5,000人がパンデミック中に死亡したと推定されています。 このウイルスの株は、現在も季節性インフルエンザとして循環しています。

次のパンデミックを引き起こすウイルス

次のパンデミックを引き起こすウイルスの株、感染が広がる速度、症状の重篤度を予報することは不可能です。 また、発病と死亡の危険性が最も高くなる人口集団もわかりません。

世界保健機関(WHO)は、流行の可能性および(または)使用可能なワクチンや治療法の不足により、最大の公衆衛生リスクをもたらすとされる優先疾患のリストを作成しました。 現在、リストには次の疾病が含まれています。 COVID-19、クリミア・コンゴ出血熱、エボラウイルス病、マールブルグ病、ラッサ熱、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERSコロナウイルス)と重症急性呼吸器症候群(SARS)、ヘニパウイルス感染症、リフトバレー熱、ジカウイルス感染症、および「疾病X」。「疾病X」は、今のところヒト疾患の原因として知られていない病原体によって引き起こされる病気のことです。

判明している事実

COVID-19で見られたように、パンデミックは生活のあらゆる側面を混乱させる可能性があります。 従業員本人の発症、あるいは発症した家族を看病するための欠勤により、事業が多大な影響を受ける可能性があります。 学校が一時的に閉鎖されたり、大規模集会がキャンセルされたり、政府当局が渡航制限を課したりする可能性があります。

インフルエンザのパンデミックは、波状に広がります。 流行の波は数週間から何か月間にわたって続く可能性があります。 隔離やその他の公衆衛生対策によって感染の速度を抑えることは可能かもしれませんが、世界的な広がりを阻止できる可能性はあまりありません。 新たなワクチンや治療法を開発するには、数か月から数年かかる場合があります。

パンデミック対策計画

パンデミック計画は、このような影響を軽減することが期待されます。 医療や基幹サービスなど一部の産業にとって次のパンデミックに向けた準備計画を立てることは極めて重要であり、また義務であるとも言えますが、すべての組織においてもリスク評価を実施し、事業継続計画にパンデミックの脅威が含まれていることを確認することが求められます。

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